RidgeRacer Unbounded: リッジレーサーではない良作

Steamでまさかの日本語入りで販売かと思ったが、なんかうさん臭かったので、ロシア版で購入した本作。
フタを開ければ、Steam版に日本語はなく、販売自体も1日で終了(おま国化)と、なかなかの惨状であった。

とは言え、アーケードスタイルのレースゲームとしては見事な出来映えだ。

  



■システム周り
リードコントロールバイスは360パッド。ステアリングを持っていてもパッドを推奨。
1920x1080でSuperSamplingを掛けるとさすがに60fps維持できない場面があるが、それでも50fps程度はキープできており、美しさと動きのバランス感覚はよい。
1360x768程度まで下げれば、完全に60fpsに張り付く。
一方で描画オプションはブライトネス程度しかないので、設定をいじって軽くするなどは不可能(自動でやっているかは不明)。

また、読み込みの速さが特に優れており、新しいトラックを選んでからレースを始めるまでの待ち時間はかなり短い。
失敗した時に、ポーズをかけてリスタートをする人も多いと思うが、その際も一瞬で仕切り直しができるなど、快適さにおいては、他のレースゲームと比べても相当にすぐれている。

効果音は普通のクオリティ。
BGMはユーロビート系ではなく、分かりづらいテクノが多いので好みが分かれる所かも知れない。私はビートラインに乗せたメロディアスなものが好きなので、本作の楽曲はあまり好きではない。
ただ、楽曲自体が悪いわけではなく、収録曲数もそれなりに多く、走行中にパッド操作で選曲できるなど、UI周りのセンスはむしろよい。
ボリュームバランス的にややBGMは小さいので、OPTION設定でかなりあげてやるとよい(他は下げる)。



■なぜリッジレーサーではないのか
このゲームはリッジレーサーの名前を冠しているが、制作自体は「Flatoutのクリエーターが参加」と謳われている。
その性もあってか、クルマの挙動と、ゲーム性の両面で「リッジレーサーではないテイスト」が強く入り込んでいる。

 

・安直なドリフトを捨てた挙動
もともとリッジレーサー自体も大きく「初期リッジ」「R4」「リッジレーサーズ以降」に分けることが出来るが、ドリフト感覚についてはこのうちのどれでもない。
具体的には、サイドブレーキボタンが存在し、それをきっかけにテールを滑らせ、ステアリングで挙動を調整するという動作なのだが、進入速度による慣性ムーブメントの影響がかなり大きい。
この為、慣れないウチは、高速でドリフトに入り、そのまま壁に叩きつけられて減速するといった挙動になりがち。
つまり、「ドリフトさせておけば速い」という特徴が失われているのである

・破壊をコンセプトにしたゲーム性
ドリフトやスリップストリームでパワーを貯め、満タンで使用すると、加速すると共に「体当たりで敵車を破壊する」という能力が得られるようになっている。
真後ろや真横からの体当たりであれば、ほぼ100%の確率で「一撃撃破」が可能であるため、パワーが貯まった状態であれば「すぐ目の前の敵車は既に死んでいる」と言うくらい強力。
前述したとおり、ドリフトは直接的には弱体化したが、このパワーを貯めるという要素が大きいので、総合的に重要なのは変わらない。

この要素自体はアーケードスタイルのゲームなので悪いことではないのだが、ドリフト以外は普通のレースだったリッジレーサーにおける「異物感」を際だたせている。



■ではダメなのか?
リッジレーサーではないのは事実なのだが、ダメかというとそうでもない。
むしろ、リッジレーサーズ以降のリッジレーサーの中では最もおもしろいと言える。
これは、「ドリフトでパワーを貯めて、貯めたパワーで抜く」と言うコンセプトを破壊の方向に振ったことで、「より逆転性の高いレースシーンを体験できる」様になっているからだ。
※補足すると、リッジレーサーズ以降のニトロよりも強力で分かりやすい。

また、敵車のコーナーリングは相当速く、「敵車はカーブで遅いので、カーブで抜き、他でミスらなければ1位でゴールイン」というシミュレーター色の強いレースゲームが持ち合わせている弱点も克服している。

さらに言うなら、体当たりまで積極的にゲーム性に取り込んでいる為、敵車のAIのアグレッシブさが自然に昇華されているのもうまい。
 



■独自のトラックを作って走れる要素
他にも、自分でタイルを並べる形でトラックを作り、それをオンラインで公開して他人に走って貰う遊び方もできる。
このオリジナルトラックでは、ハーフループやジャンプ台など、通常のレースゲームではあり得ないようなオブジェクトも用意されている。これらをうまく組み合わせることができれば、トラックマニアの様な「立体的な動きをするコース」を作って楽しむこともできる。

 



いくつかバリエーションはあるとはいえ、「走れるのが市街地ばかり」という弱点は抱えているものの、素性のよいアクションレースゲームとして一定の評価を受けるタイトルになるであろうと予想できる。

ちなみに私はFlatoutシリーズは合わなかったのだが、このゲームは非常に楽しめている。
FlatoutやBurnoutと似ているのは見た目だけで、中身はずっと合理的にできているからだ。