2011年のゲームシーンを主観的に振り返る

今年もそろそろ終わるので、月並みだが今年一年をゲームシーンの観点で振り返っていきたい。

プレイしたゲームをまとめるような総括は、みんなやってるだろうから、特別やらない。
どうせ今年のベストゲームは「WhiteAlbum2」で、次点は「Skyrim」に決まってるし。



ソーシャルゲームの席巻
今年のゲームシーンで最も印象深いのは、個別のタイトルではなく、2009年頃から勢力を拡大し始めた課金型ソーシャルゲームの開花だ。
テレビを何となく付けても、ゴールデンタイムにそれらのCMが流れているのをよく見かけるし、野球の球団を保有するほどの資本力、影響力も持つようになっている。

これらのコンテンツは実に明快なコンセプトで作られている。
書こうと思えば、それだけで2〜3日分の分量になりそうだが、端的にまとめるなら、

(1)追加投資なしではじめられる
(2)金をつぎ込むと有利になる
(3)金を遣わない層は負け役としての役割がある

という構造だ。
ポイントなのは無料で遊ばせる代わりに、負け役をうまく押しつけている点。
少しでも金を遣えば、無課金のプレイヤーに対して優位に立てるので、金をつぎ込む意味が生まれるのだ。
しかし、自分より金を遣っているプレイヤーに対しては不利なので、絶え間ない軍拡競争の構造ができあがる。
この構造を保障する為に、ゲームシステムはアホらしいほどシンプルにしてあるし、見え透いている反面「金遣ってる奴に負けてもしょうがない」という合理化まで、勝手にやってくれるという利点も生じる。

とは言え、この構造だけであれば、誰でも思い付く。
ソーシャルゲームが本当にすごいのは、「この様な魔的な構造」を現実のものとして実現し、それで収益を上げている点だ。
少しでもゲームが好きで、おもしろいものを作ろうという気持ちがあったら、遣った金の多寡で勝負が決まるゲームは作れない。
ものすごいプロ根性だと言える。



■果てしない安売りの嵐
毎日何かしらのゲームがセール対象、その上、年に数回あるビッグセールも来る。
また、去年までは旧作タイトルから利益を拾うような売り方だったが、今年のセールは様相が大きく変わった。
発売間もない新作までもがセールの対象になるようになってきたからだ。

この理由は簡単に想像が付く。
(予約が終わったあとの)値引きもおまけもない「定価」で買うのはアホくさいからだ。
買い手がアホくさいと思ったら、ゲームは売れない。

一方で、ゲームタイトルのインパクトは発売から時間が経過すると共に薄れていく。
発売から1年も経過したタイトルが値引きされるのと、発売2週間でいきなり値引きされるのではインパクトが違う。
この為、「どうせセールまで買って貰えないなら、熱いうちにセールをすることで、より多くの人に訴える」という戦略に行き着くわけだ。

新作のセールに対して、
「ええっ、あれがもう安くなったのか!?」
ってのは同時に、「いい知れないお得感」も同時に彷彿とさせる。
1年後に同価格でも買わないゲームであったとしても、それが熱いうちなら「ついうっかり」買ってしまうなんてことが起こるのだ。

うっかりさんが、Steamのアクティブユーザーの5%も居れば、それだけでゲームは数十万本単位でいきなり売れる事になる。



■未完成ゲームの見切り売り
一部のパブリッシャーでは去年から目立っていたが、ストラテジーに関しては今年は本当に散々な一年だった。
確信犯のパラドックス社の自社タイトルは比較的おとなしい一年だったが、代わりに、同社パブリッシングの「Sword of the Stars2」は豪快にやってくれた。
また、「Stronghold3」の様に名実ともに知られたシリーズも、やらかしてしまっている。
個人的に気になっていた氷と炎の歌を原作にした「Genesis」も(露骨な未完成ではないものの)これまた然りである。

資金的な都合もあるのかも知れないが、そのツケをユーザーに回すのはよして貰いたいものだ。
※FallenEnchantressは、まだ出てない分まだマシだよなあ・・・。



■日本語ローカライズタイトルの隆盛
海外ゲームのパブリッシャーが自社で日本語ローカライズを行い、日本向けに普通に販売するという動きが出始めている。
メジャーな所では「RAGE」や「Skyrim」が記憶に新しいが、それ以外にも「Fear3」の様にロシア版に日本語が入っているケースや、「War in the North」の様にこっそりと日本語リソースが入っているケースもある。
また、2010年タイトルの「CIV5」の様に、当初日本語なしで売られていたが、ある日突然日本語版に変化したというタイトルもある。

これは、Steamに代表されるDL販売を利用すれば、「ややこしくて複雑な日本のパッケージ版流通なんて必要ない」という事実に海外パブリッシャーがやっと気づきはじめたという事を意味する。
ローカライズに掛かるコストは、かなり気張っても1000万円。一本あたりの利益が20ドルと見積もれば、たった6250本売るだけで元は取れる。
吹き替えまでしなかったり、ダイアログが少ないタイトルなら、コストはずっと安くなる。
どうせコンソール向けにローカライズするタイトルなら、自社で売った方が儲かるのは自明な事なのだ。

※そもそも論として、パッケージ版は流通に中抜きされる分のコスト高がひどく、それが理由で販売が不振になるという悪循環もあった。



■2012年へ向けて
来年どうなるかは何ひとつ明確な根拠をあげられないが、安売りのカウンターとしての「高級コンテンツ」が見直される可能性を指摘しておきたい。
重厚長大に丁寧に作り上げ、自分を安売りするような真似はしないが、それでもユーザーを惹きつけるというタイトルだ。

別の表現を使うなら「安売りで安易な利益を取りに行かない事を(暗示的に)保障することで、発売直後からセールまでの暗黒期間のユーザーの利益を保障するモデル」だ。
値引きされないなら、セールを待つ意味はなくなるので、気持ちよく買いやすくなるという訳だ。

個人的には同じ利益獲得志向でも、DLCてんこ盛りの売り方よりも、しっかり仕上げたものを定価で売るスタイルの方が、精々していて好みに思う。