【Payday the Heist】 回数を重ねる毎に大胆かつ効率的になる

悪事っていうのは、初めのうちはおっかなびっくりだけど、回数を重ねる毎にさじ加減が分かって大胆になっていくと言われている。
銀行強盗などを扱う本作もまさにそれに近く、おっかなびっくりで無駄な行動が多かった初犯と、20ほど銀行を平らげたあとの動きのキレには雲泥の差がある。

突入と同時に各方面へ散り、10秒でカードキーを持つ支配人を見つけ出し、カメラを効率的に破壊するポイントに立つ。
仲間の合図と共にカメラを壊し、支配人を床に落とし、駆けつけた警備員を射殺する手際の良さは、犯罪芸術に近い。



■L4Dの亜種だと思っていた
4人COOPを主とするFPSであるPaydayは、どうしてもLeft4Deadのイメージが強くつきまとう。壁越しに仲間の位置が輪郭で見えるようなイメージはまさにそれだ。
実際、大量の雑魚、4種類のエリート敵、ときおりオブジェクトをはさむ展開などは似ている。しかし、そのプレイスタイルは意外なほど異なっている。


・ゾンビから警官に
L4Dでの敵は大量のゾンビだった。
やつらの攻撃手段はツメや噛みつきといった近接攻撃だったので、どっと押しかけてくるのを、固まって撃退するという戦法が有効だった。

      Z
      ↓
      ○
   Z→○ ○←Z    ↓:突撃
      ○       Z:ゾンビさん
      ↑       ○:プレイヤー
      Z
  L4Dでは仲間の側に陣どることで、様々な方向から押しかけるゾンビに対する
  対応力を増すことが出来た。


一方、PAYDAYでは警官やSWATが相手となるので、敵が銃で武装している。
この為、遠距離戦が主体となり、敵が無防備なまま突っ込んでくる様な動作は(あまり)行われなくなる。
遮蔽物に身を隠し、自動回復する僅かなシールドを使って敵を減らすようなプレイになるわけだ。(或いは撃たれる前に倒す形で前進するのもあり)

また、味方と固まっていると敵の攻撃をその場に集中されてしまう。この為、Paydayでは、固まっていてはダメで、お互いが見える程度の距離で分散するのが賢い。
L4Dの黄金律であった、狭い場所で肩を寄せ合って嵐を凌ぐプレイは否定されているのだ。

   P  P  P  P
   ↓  ↓  ↓  ↓
    ↓ ↓  ↓ ↓    ↓:銃撃
     ↓ ↓↓ ↓     P:ポリスマン
      ↓↓↓↓      ○:プレイヤー
      ○○○○
  寄りそって陣どり、警官の注意を集中させてしまうと遮蔽物から
  顔を出した瞬間に大量の弾丸を浴びて、一瞬でシールドが吹き飛んでしまう。


   P  P  P  P
   ↓  ↓  ↓  ↓
   ↓  ↓  ↓  ↓
   ↓  ↓  ↓  ↓
   ↓  ↓  ↓  ↓
   ○  ○  ○  ○
  注意が分散していれば、同時に受ける銃撃の量は低減される。
  長く顔を出していられるので、味方の総合火力はアップする。


・敵のラッシュタイミング
L4Dにあったパニックタイム演出は、Paydayでは(警官チームの)アサルトとして表現されている。大量の雑魚が押しかけてくるのは似ているのだが、Paydayではその発生タイミングが事前に分かる。(イベントで強制の場合もある)

「警官隊が突撃準備を行っている。猶予はあと20秒程度しかない」

などの音声が流れたら、時間以内に、撃退に相応しい地形を確保したり、ちょっとだけ無理をして前線を押し上げたりすることができる。
また、アサルトは周期的に行われるので、ダラダラとプレイせず、「進める時にどんどん進む」というメリハリ感を生み出すのにも成功している。

・有限の弾薬
Paydayをはじめて遊んだプレイヤーが共通に経験するのは弾薬不足だ。

L4Dでも主武器の弾薬には限りがあり、やたらと撃ちまくっていれば弾が尽きる様にできていたが、意識してプレイしてれば弾切れになることはまずなかった。
また、例え弾が切れても拳銃弾は無限だったし、近接攻撃も強力という救済措置があった。
しかし、Paydayでは持ち運べる弾薬量が少ないので、簡単に弾切れを起こす。弾薬の補給は敵を倒した際に落とすものを回収するか、ひとり1個までしか装備できない、弾薬バッグを使うしかない。

倒した敵が落とす弾薬はひとりあたり数発とかなり少ないし、そもそも、回収する為には敵が倒れた場所まで進まないとならない為、「弾を取りに行ったらハチの巣」なんてことも起こりうる。
また、自然と前へ進むプレイに誘導されるのもよい点だ。

弾薬バッグは最大でもチームで4個なので、何個持ち込むのかと、どこに置くのかに戦略要素がある。
この「とっておきを使うぜ」感はなかなかよい。


・死亡リスクの低減
Paydayは時間で回復するシールドと自動回復のないライフの二段構造でHPを表現している。
この為、シールドがあるウチはリスクを冒して銃撃を行い、シールドがはがれそうになったら遮蔽物に身を隠して、シールドの回復を待つようなプレイが基本になる。

この様にPaydayは基本的に死にづらいようにできている。
そして例え死んでしまっても、それに対する救済措置も複数用意されている。

ひとつ目は味方による救護で、ライフがゼロになりその場に倒れてしまっても、30秒以内に味方が助ければ、再び立ち上がって行動可能になるというもの。
繰り返して居ると、あっという間にやられるようになるが、2〜3回程度であれば実用上問題ない。
この方法のリスクは、危険な場所で死んでしまうと、助けに行く味方もやられてしまい、連鎖的に全滅してしまうことにある。ライフが極端に減っている場合は、「タイミングを見計らってわざと死ぬ」くらいの方がよい。

ふたつ目は救護が間に合わず、収監されてしまった場合の救出方法だ。
これはこのゲームならではのユニークなもので、一般人や警察官を人質にとり、人質交換の形で味方を助けるというもの。
人質を取る為には(有限の)拘束バンドが必要となるが、一般人自体は(場所にもよるが)数多くいるので問題にはなりづらい。
欠点としては、逮捕されてから人質交換が可能になるまで、3分待たなくてはならない点だ。その間は残ったメンバーで警察の攻撃を凌がなくてはならない。
(修正)3分は自動復活で、人質交換の場合はそれより少しはやい。カウントダウン中は人質交換が行えないが、もしかすると、アサルト中もそうなのかも。



■攻略性が高いゲーム内容
・クリアするまでの試行錯誤のおもしろさ
またゲーム展開についても、毎回展開を変えることでリプレイ性を高めていたL4Dとは違ったアプローチが採用されている。
と言うのも、基本的にPaydayは難しいゲームにできている。

難しく出来ているのだが、ステージ毎の特徴を把握して、上手に立ち回ることで難所も切り抜けられるようにできている。
また、失敗したとしても、その間に稼いだ名声点によって、武器や装備のアップグレードを行える。キャラスペックが向上することで、次回はより展開が楽になると言う寸法だ。

後者のキャラ強化によるステージクリアは、私はあまり好きではない。
と言うのも「強化しなかったらクリアできない難易度であれば、はじめの数回は経験値稼ぎの場でしかない」し、「強化しなくてもクリアできる難易度であれば、そもそもシステム自体が意味のないもの」になってしまうからだ。

Paydayの場合は、「強化しなくてもクリアできる難易度のそぶりを見せつつ、結局は失敗して全滅する」という絶妙のさじ加減にできている。
これはステージの攻略性にも関連しているのだが、「キャラスペックの性で負けた」と言うよりも、別の「行動上の問題で負けた」と思えるようにできているのだ。

例えば、
『弾薬が尽きかけたので、回収しようと前に出たら、思ったより攻撃を集中されてダウン。助けに来た味方もやられて、そのまま全滅してしまった』
の様な負け方の場合、

「武器の装弾数を増やす」「HPを増やす」「弾薬バッグを使う」「武器の攻撃力を増やす」などでも対応可能なのだが、プレイヤーの認識としては、「無理したから死んだ」に帰結するのが非常にうまいのだ。

つまり、やや難しめのステージをクリアするまでの試行錯誤は非常におもしろい。
数回こなしていれば、徐々に楽になっていく、救済要素があるお陰で、「次はもっとうまくやれるはずだ」となり、繰り返して楽しむことができる。


・クリアした後のリプレイ性
一方で警官側のアサルトがある程度周期的になっているなど、偶発性は高くないゲームになっているため、リプレイ性は比較的高くはない。

もちろん、アイテムの場所などランダムな要素はあるので、まったく同じゲーム展開という訳ではないが、それでもL4Dと比べれば画一的なイメージだ。
(普通のFPSの周回プレイよりは多様性はあるので、単純に欠点とは言えない)

実績の解放やタイムアタック、制限プレイなど、プレイヤー側が工夫して楽しむことはできるので、そういった「やや深い楽しみ方」ができるかが、このゲームのリプレイ性を決定づけるだろう。



■システム周り
グラフィックは最近の視点で考えればかなり軽い部類。
まれにフレームレートはそれなりでも、動作は重いという訳の分からないゲームもあるが、このゲームは全体的に軽快でよい。
見た目も最新のテクノロジーが採用されているわけではないが、特別に不満は内水準がある。
一方でグラフィックオプションの調整機能はない。
ユーザーが設定できるのは解像度とVsyncの有無だけという潔さだ。

BGMやサウンドのクオリティは、個々のクオリティは並なのだが、その使い方はとてもうまい。表現が難しいが、並の素材をうまく組み合わせることで、上等な料理になっている感じである。
ゲーム展開が音声で説明されるのも、(英語がある程度聞き取れれば)とても分かりやすい。

武器のエイミングはキャラクターの成長に合わせて徐々に強化されていくが、最初の時点では、この手のアクションシューターにしては弾が当たらない。
言い換えれば、狙った所にダイレクトに飛んでいかない場合が多い。
ダメージについても似たり寄ったりで、遠方のヘッドショットがままならない敵を撃った場合、例え命中して膝から落ちても、やる気を取り戻して立ち上がってくる。ものすごいガッツである。
どちらも名声を獲得して武器を強化することで、狙った所に飛ぶ事でヘッドショットしやすくなり、また、体に当てた場合でもそのまま殺しきれる可能性がアップする。

マルチプレイのマッチングは「パブリック」「フレンド限定」「プライベート」の三段階に分けられており、ホストがゲームを建てる際に選択できる。
Steamのフレンドリストを適切に管理している人であれば、フレンド限定はなかなか使いやすいマッチングシステムであろう。ラグは国内の人と遊ぶ場合はまったく気にならない。またパブリックにしても、Pingを考慮してマッチングしてくれてはいるようだ。



■まとめ
一方で、シングルプレイはマルチプレイの残り3名をCPUに担当させてプレイするというだけのものなので、CPUがうまく行動してくれなかったり、単純に弱かったりで楽しむのは難しい。
あくまでもCOOPプレイのゲームとして購入するのであれば、大正解であろう。

ちょっとだけリアル系というゲームの味付けは手頃なので、普段はCODの様なアクションゲームをメインに楽しんでいる人も、ARMA2の様なシミュレーターをメインに楽しんでいる人の両方が楽しめる。

また、発売時の定価が20ドルと低価格帯のゲームであるにも関わらず、全6ステージと40ドル程度のフルプライスの内容があり、大変充実感が高い。
5割引になったとしても、たった10ドルしか安くならないので、興味を持ったら新作のウチに買って楽しむ方が得なゲームかも知れない。