【Sword of the Stars 2】 露骨な未完成発売ゲーム

前作がかなりおもしろかったSword of the Starsの新作が出たので、発売寸前に予約して購入。
GamersGateの方が少し得なのだが、CDキー関連のトラブルを心配してと、GG側のおまけDLCは他にも取ってる人が沢山いるだろうって事で、あえてSteamから購入。



■前作との比較
端的に言うと、非常にシンプルで分かりやすかった前作と比較すると、今作ではかなり要素の複雑化が図られているのが分かる。
私は前作の実直さをかなり買っていたので、今作のこの複雑化にはやや微妙な心境を持っている。少なくとも初心者向けのストラテジーではなくなってしまった。


・恒星系という考え方
前作では恒星系があたかもひとつの惑星であるかのように表現されていた。
例えば、太陽系であるなら、そこは太陽系ではあるのだが、「実際には地球」という扱いだった。

今作ではこの太陽と地球の関係がキチンと表現されている。
太陽系は太陽系としてあり、その太陽系の惑星のひとつが地球という扱いだ。
これにより、複数の惑星に入植している恒星系というものが存在しうるようになった。

・・・のだが、地球を選択するのに、太陽系を選んでから地球を選択するだけでもかったるい。
この頻繁に使うような行動の手間を増やしてまで、恒星と惑星の関係を表現する意味があったのかと問い詰めたい。

・軍艦設計プロセス
SotSシリーズのおもしろさのひとつは、技術研究をして新しい兵器を開発し、それを搭載した「新型艦」を設計出来る部分だ。

前作から踏襲した要素として、軍艦の三分割方式がある。
どういうものかというと、ひとつの艦を「艦首」「中央構造」「艦尾(推力部)」の3つのパートにわけ、それぞれどのタイプのパーツを使うかで、新型艦を作れるようになっている。
三分割されていない代わりに、同じだけのバリエーションの艦型があっても、複雑で分かりづらくなるだけなので、この辺のさじ加減は見事だと言える。

今作からの追加要素としては、艦型それぞれに、「資財」「エネルギー」「人員」の最大数が決められていると言うものがある。
装備や武装はその枠内に収まるように設計しないと、「実現不可能な設計」として、建造できない艦になってしまう。
※そもそもその様な艦は設計完了できないべきなのだが、なぜか、造艦発注書までは作れてしまうので、知らないと分かりづらい。

また、気楽な設計変更をホイホイ行い、様々なタイプの艦が乱立する要素を「美しくない」と見たのか、本作では新規設計の艦の建造には「試作型」として、10倍近いコストが掛かるようになっている。
より計画的な技術革新と、建造のバランスを取る必要がある。
※試作型だけ、量産型よりもちょっとだけ強いという要素があったら最高だったと思うのだが、ちょっと惜しい。

・内政プロセス
内政は詰まる所、「どこにどの程度の資金を割り当てるか」というだけの話でしかない。
前作でもそうだったが、今作でも幾つかのスライドバーを調整するだけで行える。

ただ、設定可能な項目は前作よりも多く、「どれがどんな効果を生むのかよく分からない」ので、今のところ何とも言えない。

・艦隊の移動
このゲームのユニットは、複数の軍艦で構成される艦隊である。

前作では艦の移動は、それぞれの艦が独立軍であるかのように、恒星系から恒星系へ自由自在に移動できたが、今作では、根拠地に所属している艦隊が、任務地に対して出征するという形式を採用している。

私もまだよく把握し切れていないが、例えば「惑星の調査」という任務を、母星の艦隊に割り当てた場合、その艦隊は目標となる惑星の調査を行った後、自動的に母星に帰還する。
任務を与えられるのは母星にいる艦だけになるので、飛び石的に探索を行っていくような行為は行えないようだ。

これに類する例としては、植民特務艦を使っての植民がある。前作では植民が完了すると植民特務艦は「消えてなくなってしまった」が、今作では流石にそんなことは起こらない。
母星に帰還した植民特務艦は、何度でも繰り返して使える。

艦隊の行動範囲を示す、燃料については扱いがまだよく分からない。それらしいパラメータが前面に出ていないので、もしかすると、オミットされたのかもしれない。
確かに、帰り分の燃料がない惑星に対して艦隊を繰り出すというのは、常識で考えたらおかしすぎるから、悪くはない。


・技術開発
技術の開発は前作とほぼ類似したシステムで、基礎となる技術を開発すると、そこからさらに発展可能な技術がアンロックされていくという方式。

種族によって、次の技術の開発が可能かについて、ランダム要素があるのが特徴。
これは「種族毎に得意とするテクノロジーが異なる」という要素を「傾向としてはそうだが、必ずしもその限りではない」という実際にまで落とし込んだ、非常におもしろいシステムだ。

前作では、ある技術の元となる技術を開発した場合に、一定確率で、その先の技術が研究可能になるという仕組みだった。
今作では「とりあえず先の技術は見えている」が、未知の技術に関しては「実用化考察」を行って、その技術が本当に開発可能かを見極めるプロセスが発生する様になった。
どういう事かというと、まず第一段階として研究者に「実用可能であるか」を研究させることで、その結果「60%くらいの確率で実用化できるだろう」などの回答を得る事ができ、その上で、本当の研究を進めるという形式だ。

実用化出来なかった場合に、投資したリソースがどの様になるかは、私には分かっていない。(なにせ説明書を読んでいない)
非常に時間(と金)は掛かるがともかくは開発できるのか、無駄だと判断された時点で、打ち切られてしまうのかで随分とゲーム性は変わりそうだ。
(80%の確率の研究で25ターンを費やして、結果的に無駄に終わったら、それだけで負けかねない気もする)

・戦闘
艦隊を整えて、「諸君、戦闘の時間だ!」と唱えたら、ゲームがクラッシュしたので分からない。



■致命的とも言える完成度の低さ
SotS2は発売直後に「古いバーションを製品版として公開する」という愚を犯し、その数時間後にやっと「本来の製品版」がリリースされた。
古いバージョンはいろいろおかしく、かなり不安定だったので、「製品版がこれから出るなら期待できる」と思った人も居ただろうが、実際の所、「製品版もかなりちゃらんぽらんな完成度だ」

表示系を中心におかしな点が散見されるし(例えばヘルプテキストの内容が明らかにおかしいとか)、普通に100ターン程度プレイしただけでクラッシュしたりもする。
私の基準では、製品版としての評価には値しないというのが正直な所。

前作よりもグラフィック面では大幅に強化されているし、システムが複雑になっている点も、「前作とは明らかに違う」という点で期待が持てる。
ただ、基礎的な部分がこの水準では、とても人に勧められない。むしろ、「気になっていても、今買うなら、覚悟しろ」と言わずには居られないほどだ。


新作としての新規性はあるので、もう少しがんばってプレイしてみるが、クラッシュバグがあるままのプレイは精神的にきつすぎる。