DungeonDefenders: タワーディフェンスの皮をかぶったアクションゲーム

プレイ前、このゲームに対しては、タワーディフェンスアクションRPGのハイブリッドゲームとして、なかなか好評を博しているゲームだと思っていた。

ところがどっこい。
いざプレイしてみるとタワーディフェンスの要素は焼きそばにかけた青のりほどのもので、中身はCOOP前提ゲーだったのだ。

今日はこれについて。

 
 パラメータでは見えないが武器によって、スイング速度とリーチが変わる



■なぜタワーディフェンスとして失敗作なのか?
DDはTDとして見ると露骨な失敗作である。
細かな理由はいくつもあげられるが、ひと言でまとめるなら、「タワー構築要素は添え物に過ぎない」という点に尽きる。

これはタワー構築は基本的な定石どおりに行い、あとはアクションゲームとしてのプレイング(リアルタイムのアップグレードや修理を含む)で楽しむという作りになっているからだ。
すべてのステージで、「敵の進行を遅滞させ」「そこに攻撃を集める」というアホでも思い付く様なタワー配置がベストになってしまっている。
この為、ステージ構成に応じた、「特別な配置」なんてものに思いを巡らす楽しさは殆どない。パッと見て想像出来るような定石配置がそのままベスト配置になるからだ。

またアクションRPG要素を取り入れたことで、主に武器の育成度がゲーム展開においてかなり大きなウェイトを占めるようになっている。
例えばまったく同じクラスであっても、ヘボイ武器だと、1回の攻撃で50ダメージ程度のところで、優れた武器を装備するとこれが2000ダメージくらいにはなる。
これは誇張でもなんでもなく、実際にそうなのだ。
(※本当の実際には、2000ダメージの武器があれば、50ダメージの武器の出番はないが)

つまり、タワーディフェンスゲームにアクションRPG要素を取り入れたと思っていたゲームは、「タワーを建てれるアクションゲーム」だったのである。



■シングルプレイのまずさ
さらに悪いことにこのゲームのシングルプレイモードはかなりひどい。
ひと言で表現するなら「メイジ以外のクラスではゲームが成立しない」と言った感じになる。

これはメイジ以外のクラスには、必要な防御能力を発揮するタワーが揃っていない為である。
戦士はまだ救いようがあるが、ハンターやモンクではじめた場合は、メイジでのプレイよりもずっと苦労が絶えない展開になる。
というか、2面の時点でメイジと同レベルクリアができないバランスだ。

もちろん育成要素のあるゲームなので、同じステージを何度もプレイしてキャラや武器を育てれば、そのうちクリアできるようにはなる。
ただゲームバランスという面で見ると、クラスによってこれだけの差が出るのは「欠陥品」呼ばわりされても仕方がないと言える。

 
 キャラ育成、アイテム育成の要素は意外なほど豊富。深くはないが。



■COOPのおもしろさ
ところが3〜4名のCOOPプレイを試してみると、「タワーディフェンスではないが、アクションゲームとしてはおもしろい」というレベルになる。
これは単純に、人と遊ぶことで発生する効果ではなく、それ以上の効果を持っている。
言うなれば、ゲームシステムそのものがCOOP向きにデザインされていると言ってもいい。

まず、シングルプレイとは異なり、設置できるタワーのバリエーションが増える。
このゲームはステージ毎に設置できるタワーのトータルコストが決まっているので、タワーの数を闇雲に増やすことができない。
しかし、タワーのバリエーションが増すことで、「同じコストだがより効果的なフォーメーション」を作ることが可能になるのだ。

次に、難易度を上げてのプレイも現実的になってくる点がある。
これは前述したタワー効率のアップとは別に、プレイヤーキャラクターが増える事による直接戦力の増加も大きく関係している。
「簡単なゲームを適当に攻略する」より「ギリギリのバランスのゲームを攻略した方がおもしろい」し、同じギリギリのバランスであったとしても、「達人4人でなくては攻略できないゲームを攻略する方がおもしろい」という理屈である。

また、難易度を自ら高めてプレイする場合は、現在の戦力でクリアできない可能性も織り込み済みなので、「どうやってもクリアできない」というパターンにはまった場合でも、素直に、「キャラが育ってないからなー」と納得できるのもよい。



■シングルプレイなら駄作、COOPなら良ゲー
グラフィックは綺麗だし、こざっぱりまとまっているので流石に「劣」評価はつかないが、並作というのが本ゲームの正当な評価。

ただし、知り合いとのCOOP限定で考えるなら、良を付けてもおかしくはないといういびつなゲームだ。
これは丁度、シングルプレイで遊ぶLeft4Deadと、COOPプレイで遊ぶLeft4Deadのおもしろさの違いの関係に似ている。
※ただシングルプレイで見る場合、(驚くべき事に)Left4Deadの方がずっと優れている。

元々、COOPゲーとして設計されたゲームなのだが、購入前にそれが分かりづらいのはいただけない。
ひとりだけで遊ぶ予定ならば、他のTDゲームをプレイした方がずっといいだろう。