Oil Rush : ウォーターワールドRTS

ロシア産のゲームは色が濃い。
海洋RTSのオイルラッシュでもその傾向は顕著で、ビビットなトーンのスクリーンショットを見ていると「おもしろそうなゲーム」に見える。

そうすると、本当におもしろいのかって話になる。
と言うことで、(現時点の)日本語で読める最も詳しいレビューをしちゃう。

 
 驚くべき事に、ほとんどの操作は右下のミニマップで行う



■拠点ベースのRTS
オイルラッシュの特徴は、マップの構成単位が拠点になっている点だ。

ユニットの移動を拠点単位で行う為、「拠点Aにいるユニットの50%を拠点Bに対して移動させる」の様な感じで指示を出す。
個別のユニットを任意に選択することはできないが、移動させるユニットの種類と、移動させるユニットの数を25%、50%、100%で指定できる為、思ったより細かな指示をだせる。

例えば、プレーン4機、スクーター9台、シップ2両の拠点から移動させる際、
そのまま「50%」を指定すれば、「プレーン2機、スクーター5台、シップ1両」が移動対象として選択される。
代わりに、「スクーターとシップの50%」を指定すれば、「スクーター5台とシップ1両」を選択できるという具合。

生産したユニットを集めて、敵の拠点に向かって移動させ、敵ユニットを殲滅して拠点を奪うというのが、ゲームの基本的な流れだ。

《拠点の種類》
拠点には大まかに4つのタイプがあり、それぞれ、敵を排除した状態で味方のユニットが10秒ほど留まると占領できる。

・生産施設
 占領することでユニットの生産を自動的に行う拠点。
 生産するユニットは拠点の種類によって異なる。
 それぞれの拠点毎にユニット上限(POP CAP)が決められている。
 つまり、ここを占領することでユニット数を多くできる。
 タワーを設置して防御を高めることが出来る。

・油田
 占領することで原油を得ることのできる拠点。
 原油はタワーの建設とスキルの使用に用いられる。
 油田にタワーを設置することはできない。

・貯蔵タンク
 一度に貯めておける原油の量を多くする拠点。
 貯蔵した状態で敵に占領されると、中身も奪われる。
 貯蔵タンクにタワーを設置することは出来ない。

・要塞
 親となる別の拠点に紐付いている小拠点。
 親拠点を占領すると自動的に占領扱いとなる。
 タワーがあらかじめ設置されており、射程に入った敵ユニットを自動攻撃する。

一般的なRTSにない個性としては、戦闘ユニットの生産が自動化されている点だろう。
これによって、「操作量の不足からくるユニット生産の遅滞」という心配がなくなる。
また、ユニットの生産そのものには、(直接)リソースを消費しないのでリソースマネージメントの概念からも解放される。
すなわち、「強大な軍を作る為には、より多くの生産施設を占領すればよい」という力強いコンセプトがある。

 



■ユニットの種類と役割
ユニットには生産施設で自動的に生産される「通常ユニット」とスキル(と原油)を使用することで生産される「特別ユニット」に分かれている。

ユニットの持つ属性は「艦艇」と「航空」の2種類で(「タワー」も含めれば3種類)、攻撃手段にも「艦艇のみ」「航空のみ」「どちらにも」の3種類が存在している。
この攻撃手段毎の攻撃力、射撃レートとユニットのもつHPによって相性が決められている。
多くのRTSに採用されているような相性によるダメージボーナスはなく、基本的に同数であれば「強いユニットは、いつ如何なる時も強い」という構造である。
ただし、ユニット毎に生産速度と生産数上限が決められているので、「強力なユニットは数を出しづらい」といった形になる。

《戦闘ユニットの種類》
・スクーター
高速で生産できる艦船ユニット。
弱く脆い。

・ボート
タワーに対してのみ攻撃可能な榴弾攻撃を行える。
戦闘能力はスクーターよりはマシな程度

・シップ
バランスのよい艦船ユニット。
生産枠が基本4と少ないので、どこに投入するかがポイントになる。

・プレーン
スクーターの航空版と言った所だが、対空戦闘能力はヘリより上。

・ヘリ
対地(艦船、タワー)攻撃を重視した航空ユニット。

・潜水艦
スキルによって生産できる最強の艦船だが、シップを僅かに強くした程度。
スキルを習得することで最大3隻まで出せる。

ガンシップ
潜水艦ど同能力だがこちらは航空タイプ。
スキルを習得することで最大3隻まで出せる。



■防御タワーの概念
生産施設の獲得で戦闘ユニットが増えるなら、油田なんて要らないじゃないかと思うだろうが、流石にそれほど安直ではない。
原油を使ったタワーの建設が防御において重要な意味を持つからだ。

防御タワーは生産施設に5つまで建設でき、それぞれ数段階のアップグレードを行うことが出来る。
タワーなので当然移動できないが、敵が攻めてきた場合には、これを攻撃してくれる。
すなわち、防御専用のユニットとして考えることのできる要素だ。

オイルラッシュは、攻撃用の(=移動可能な)ユニットの生産を自動化する代わりに、防御タワーの建設が手動になっており、ゲーム的な意義を高めている。

《タワーの種類》
タワーには攻撃手段に対応した複数の種類がある。
「ひとつの拠点につき5つまで」という枠内でどう建てるかに判断が問われる。
なおアップグレードすることで、攻撃対象が変わったり特性が変化するので注意が必要。

・ガンタワー
機関銃を装備したタワーで、低威力の攻撃を高速で行う。
この為、HPの少なめの多数の敵を相手にする場合により効果的となる。
レベル2から対空能力が付く。

・キャノンタワー
大口径の大砲を装備したタワーで、高威力の攻撃を低速で行う。
終始艦船にしか攻撃できないが、DPSではガンタワーを上回る。
また、射程が長いのも特徴で、レベル1からボートの擲弾攻撃に反撃できる。
レベル3で威力が若干落ちる代わりに、攻撃速度が向上しバランスがよくなる。

・ミサイルタワー
非常に強力な攻撃力を持つミサイルを発射するタワー。
キャノンタワーが艦船特化なら、こちらは航空特化したタワー。
レベル3で威力が大きく向上する。

 
 見た目と操作性を兼ね備えた、なかなかよくできたUIである



■スキルについて
敵を倒すことで経験値を獲得し、一定量たまることでパーク的にスキルを選択して習得できる。
スキルツリーは大まかに3本に分かれているが排他関係ではないので、経験値さえあればすべてのスキルを習得可能(現実にはそれ以前に決着が付く)。

スキルはユニット強化、タワー強化、生産関係(強化、遅滞)、ユニット生産、直接攻撃と多岐にわたる。
ただ、スキルをとる順番で戦略がドラスティックに変化するかと言えばそうでもなく、比較的地味な印象は受ける。



■このゲームの戦略性について
非常にシンプルな構造のゲームであるため、ゲーム性は深くないと誤解しがちだが、運要素が少ないので非常に精緻なゲームであるというのが実際。

《基本戦略》
・開幕〜序盤
6台持っているスクーターを使って、近接する生産拠点を獲得する。
その際、ユニット数上限を効率的に引き上げる為に、スクーター以外を生産する拠点を選ぶ。
ユニット数を増やしながら、だいたい全ユニットをふたつに分けるような形で進行していくのがオススメ。

・〜中盤
敵と同程度の拠点を維持しつつ、オイルの獲得を重視する。

防御がしっかりと整う前は、少数の航空ユニットを用いた奇襲がよい。
これは拠点を攻める場合でも、レベル1タワーの段階では、ミサイルタレットでしか対空攻撃を行えない為。
また、航空攻撃をイメージづけることで、敵のタワー建設をミスリードさせる狙いもある。(ミサイルは艦船に対して全く役に立たない)

・〜終盤
獲得したオイルでタワーを造り、ある程度の防衛力が付いた所で、ユニットを集め、敵の弱い拠点に対して攻撃をしかける。
一般的に、攻勢時には一時的にオイル拠点を見限る必要が出てくる。(むしろ敵ユニットがオイルに向かった時の留守がねらい目)
これを繰り返す事で、敵の拠点をひとつずつ減らしていく。

以上の基本戦略をどう利用し、どう逆手にとるかがこのゲームの対戦の柱となる。
例えば、「ミサイルタレットを設置しない代わりに、航空生産施設を艦船ユニットで抑えきって航空ユニットを出させない」など、拠点確保による行動制限も生きてくる。



■まとめ
見た目の印象だけは大作級なのだが、内容は比較的シンプルで、定価に設定されている20ドル級といったゲーム。
ただし、現在の感覚で見て「まともに楽しめるRTS」でありながら「1マッチが10〜20分程度」と言うのは十分にありな選択だと思う。
他に優れたRTSがあるからと言っても、新作の持つ斬新さの魅力は大きいからだ。

なお、マルチプレイクロスプラットフォームと言う話だが、現時点では全く人が居ないのでプレイ環境としてはかなりまずい。
これはマッチングシステムをゲーム側でサポートせずに、旧来の「誰かが干している所に入る」という形式なのが問題だと思っている。

※もしかすると、私の環境による不具合かもしれない。ゲームはいっぱい建ってるよ!って話なら、コメントでもツイッター経由でも教えて欲しい。