Wargame: European Escalation 他にない魅力を伝える

四捨五入で30時間ほどプレイしたので、他のRTSにない魅力を中心に、個性的なゲームシステムについて紹介したい。

ちなみに現時点では、マッチング、安定性、遊びやすさ、ゲームバランス、楽しさのすべての点で、最高クラスのRTSという評価をしている。

 
  ユニットの初期配置。複数プレイヤーのユニットがひしめき合う



■ユニット間の相性について
このゲームにも当然、ユニット間の相性ってものは存在している。
ただし、「このユニットにはこいつを当てておけばOK」と言う、一般的なRTSの常識は通用しづらい。

例として、地上攻撃ヘリコプターであるコブラと、自走対空砲であるツングースカの戦いを見てみよう。

 
  ツングースカ 対空機関砲と対空ミサイルを装備した一台二役の良ユニット

 
  コブラ 幾つかあるバリエーションの中での最良バージョンがこれ

一般的な常識で考えるなら、対空ユニットであるツングースカがヘリに勝てないわけないだろ!って話になる。
ユニットの能力値を見ると、ツングースカの対空ミサイルが距離3500でコブラをアウトレンジする。
そこから、コブラが自分の射程にツングースカを捉えるまでには、まっすぐに飛行した場合でも12秒かかり、この間にツングースカは2発のミサイルを発射できる。

つまりミサイル2発分、ツングースカが有利な構造になっている。
しかしそこからは、コブラの方がロックオン速度も命中精度も高いので、次々にツングースカを撃破できるようになる。
ヘリは確かに不利ではあるが、一般的なRTSの様に、絶対に相手にしてはいけないという形式にはなっていないのである。

そして重要なのは、対空ユニットはヘリをすべて撃破しても、直接その戦果を拡大する方法を持ち合わせていないのに対して、ヘリ側はひとたび対空ユニットを殲滅してしまえば、他の地上ユニットを狩り放題に狩れる点だ。

例えばコストの安いヘリを「弾避け」として前面に出して突入し、その後のコブラでおいしく頂くの様な戦術もとれる。
対空ユニットがなくなった前線部隊の末路は憐れだ。
機甲ユニットはミサイルで破壊され、歩兵はロケット弾に焼かれることになる。
全滅かそれに近い結果になるだろう。

これに対抗する手段は限られており、対空ユニットを多く出しておくくらいしかない。
ただし対空ユニットは、基本的に地上戦ではからっきしなので、敵がヘリで仕掛けてこない場合は完全に無駄になってしまう。
そして航空索敵の要素があるため、ヘリ側は仕掛けるかどうかを、相手を見てから選択できるのが大きい。
(もちろん、ヘリを大量に出しているので、それが活用できないなら不利だが、ゲリラ戦に切り替えることも出来る)

長くなったが、この様な細かな相関性が登場するほとんどすべてのユニット毎に存在している。
ともすれば、ジャンケン的な運ゲーになりかねないのだが、実際には理想通りにユニットを操ることはできず、最良の75〜90%くらいの精度になる。
そのぶれ幅が結果に対して重大なファクターになるので、ゲームとして非常によいバランスを作り出している。



■追加生産の難しいルール
このゲームは事前に渡されたコストの範囲で、あらかじめ自軍を用意しておき、開幕はそれを使ってゲームを進める。
与えられる戦費は、ゲームの設定にも因るが1000〜1500くらいの場合が多い。
ゲーム中に得られる収入は、新たにセクターを確保しない場合だと、13分で200程度などで相当に少ない。セクターをひとつ確保すれば、13分で合計600程度得られるが、セクターを確保するのにコスト200のユニットを使用するので、それを差し引けば400の収入にしかならない。

この様にこのゲームは、ゲーム途中でのユニットの追加が比較的困難になっている。
その一方で、「敵の陣容を見てから対応を考えれば有利」という概念もあるので、「だったらはじめの戦費をいくらか残しておき、初期索敵後に購入したらいいのではないか?」というアイデアも生まれてくる。

これは確かに有効な戦略で、「ヘリラッシュがないことを確認してから、(高級な)セクター取得用のユニットを出す」など、細かなテクニックに繋がる。
ただし、軍の配備が遅れるのは事実なので、敵側が積極攻勢を仕掛けてきた場合には、追加収入差をつけられて負けてしまうことにも繋がりかねない。

ここにも、単純ながらも奥深い駆け引きが展開される。

 
  30分程度の長丁場になれば、セクターを確保しての戦費獲得も要因として大きくなる。基本的に損害が収入を下回っていれば、ユニット数は減らないので不利にならない。



■索敵ユニットの脆弱さ
このゲームの索敵は索敵距離範囲ならすべて見えるという作りではなく、索敵範囲内であっても、索敵ユニットや敵ユニットの状況によって見え方がかなり変わってくる。

まず、丘がある場合、その向こう側は絶対に見えない。
これはまあ、常識の範疇なのでそれ程違和感はないと思われるが、「ごく近くなのに見えない」「むしろ離れている方が(角度的に)見える」と言った感覚になるので、普通のRTSと比較するとやや特殊に感じる。

さらにユニット毎にサイズが決められており、サイズがスモールのユニットが森の中(森のフチではなく、完全に中)に入っていると、ほとんど索敵できなくなる。
具体的にはヘリで真上を飛んでも見つからないかも知れないといった程度に隠れる。
これを利用すると、森の奥に歩兵をアンブッシュさせておき、敵ユニットの接近にあわせて森のふちへ移動させ、ミサイルをぶっ放して破壊するみたいな事が可能になる。

この様に、「索敵をしていても見つけられないユニットが存在しうる」のが、このゲームのおもしろさをさらに引き立たせている。
慎重を期すなら、事前にあやしい森に対して砲撃を行っておいたり、索敵能力を持つ歩兵である特殊部隊を差し向けるなどが有効だ。
(当然、なにも居なかった場合には完全に無駄になる。砲撃にも弾を使い、弾は(補給ユニットを購入するという意味で)戦費で補うので、実際にコストがかかるのである。

 
  左上のOH-58C/S(対空ミサイルを装備したヘリ)が、下部のMi-9(偵察ヘリ)を「近づいたら撃つ」距離で狙っている。しかし、森に潜ませたツングースカがそのOH-58C/Sを既にロックオン体制に入っている。画面上部に居る敵側の索敵ヘリからは、Mi-9のみが見えツングースカは見えていないのである。



■操作量と判断力
このゲームは普通に遊ぶだけなら、RTSとしては比較的ゆったりとしたゲームだ。
ただし、「やろうと思えばやれること」や「索敵に対して、一瞬何かが見えた(ユニット不明の形で一瞬だけ索敵に掛かる)」などがある。

この為、ひとりでふたりを相手にすると、全く同じ技量であってもまず勝てない。
もっと云うなら、自分より少し下手くらいの仲間であっても、自分ひとりですべて担当するより明らかに強いというバランスになる。

これが多人数マルチを積極的に肯定する理由付けとして、非常にうまく機能している。
私はどちらかというと、チーム戦主体のRTSはあまり好きではないのだが、このゲームのマルチプレイはユニットの移動が比較的遅いという点からも、「担当方面を割り当てる」的な形になり気に入っている。