PCゲームの本流、エロゲーの話 (その1)

FPSなんてしないですよ」って人が「俺PCゲーマーなんだ」って言ってると違和感を覚えるように、「エロゲーなんてしないですよ」って人が「俺PCゲーマーなんだ」なんて言ってると違和感を覚える。

発売本数や売り場面積占有率の面では、PCゲームにおける主流はエロゲーである。
PCゲームを愛する紳士淑女であるならば、エロゲーくらい嗜(たしな)んでいるべきである。

今回はそんな話。



エッチなのはいけないと思います
エロゲーは十分な市民権を獲得していない。
こんなのは当然のことで、エロゲーに限らず、エロ系趣味のすべてはそこはかとない後ろ暗さがある。

例えば、自己紹介で趣味を語る際、
ゲームが好きでよくプレイします。特にRPGとか好きですね
ってのは許されても、

ゲームが好きでよくプレイします。特に調教陵辱モノが好きですね
とか発言したら、一発で変態だ。
場は凍り付くだろうし、自虐的なネタかと思う人すら居るだろう。

この理由は、「エロいことは隠匿すべし」という社会的空気感が完成されているからに他ならない。
私たちの時代の社会は、エロい衝動はあまり表に発露させないのが常識とされているのだ。

そして、エロゲーを楽しむのであれば、この社会的空気感を感じ取る配慮も忘れてはならない。
エロゲーを愛好するというだけで基本的には変態方向にイメージが傾く。それを普通方向に戻す為には、平均的な者よりずっと、紳士淑女でなければならない
エロゲーを嗜む=カッコイイ知識人」というイメージを作っていけるように努力しなくてはならないのだ。

それ故に、電車内や喫茶店エロゲーをプレイするなどの倒錯した露出プレイや、キモイ発言は厳に慎むべきだと言える。
先人たる我々が模範となることによってのみ、エロゲー文化の地位向上が図られるからである。



エロゲーの基本的構造
エロゲーを解説する為には、エロゲーの基本的構造について述べておく必要がある。
これは一般作とはやや異なる常識が存在するジャンルで、そこに生きている者にとっては空気の様に常識でも、初心者には分かりづらい面もあるからだ。
もちろん、エロゲーも千差万別なので、厳密には違うものもある。ただ、一般論としては固まっている。

・ノベル系(ストーリー系)
「背景+キャラ立ち絵」の一般シーンと「イベント絵」のシーンで構成されたゲームで、会話中心のノベルを読むようにして話を進め、ときおり出現する「選択肢」から行動を選択することで、ストーリーが分岐する作りのゲーム。
分岐やそれに伴うエンディングはヒロインの数だけあり、それとは別に真のエンディングたるグランドエンディングが存在するゲームもある。

ただし、到達できるエンディングははじめは制限されており、別のエンディングを見ることで、今までなかった選択肢が現れ、別のエンディングへたどり着ける様になっている形式のものもある(攻略順固定方式)。

ノベル系以外のゲームでは、些末な差こそあれ、エンディングを迎えれば一応ゲーム終了であるのに対して、「周回プレイをしてすべてのエンディングを見るまでは本当のエンディングではない」という構造が、知らぬものにとってはやや分かりづらい。

また、選択肢がまったく登場せず、完全一本道形式のゲームも存在する。
こちらは電子紙芝居として、小説を読むような形で楽しむ。

 
  Dies irae -Acta est Fabula-

・調教シミュレーション系
ヒロインや主人公に幾つかのパラメータがあり、毎日の行動によってそれが増減し、そのパラメータの値の程度によって、取れる選択肢が増えていくスタイルのゲーム。
ノベル系の中にも、好感度などのパラメータも持っているゲームも存在するが、それらはこちらには含まない。ここに属するのは、あくまでも複数のパラメータを(ある程度任意に)調整することで攻略するゲームとなる。

このタイプのゲームは、最終的な期日(行動回数)が定められており、その時のパラメータの状況に応じてエンディングが変化するものが多い。
この為、すべてのエンディングを見ようと思ったら、何度も周回プレイする必要がある。

定期的なエロシーンを無理なく織り込みやすいスタイルであるため、エロ重視の抜きゲーによく用いられる手法である。
反面、言い換えるなら、エロ以外(のストーリー)はどうでもいいという作りになっている点に、新参者が面食らう場合がある。

 
  カスタムレイド5

・ゲーム性重視系
RPGSRPG、経営シミュレーション、ストラテジーなどの形態で、プレイの9割はそれらのゲームをプレイするのと変わりないが、ときおりエッチシーンを含むスタイルのゲーム。
このタイプのゲームには、「別にエロゲーである必要性がないゲーム」も数多く存在するが、エロのない一般作と比較した場合、ゲームそのもののデキは「やや見劣りする」のが普通である。(中には例外もある)

このタイプのゲームでも、ときおり選択肢をまぜたり、パラメータ調整の要素を持たせるなどして、ヒロインが変化したり、エンディングが変わったりする様に出来ているゲームもある。
エッチシーンが欲しくない時に(ゲームを進めたい時に)エロシーンが突然割り込んでくる、空気の読めないジャンルでもある。

 
  姫狩りダンジョンマイスター

総じて言えることは、エロゲーは「半端ないボリュームを持っている」ゲームが多いということ。また、一度クリアしたと思っても、「ヒロインの数だけ分岐がある」などで、簡単にやり尽くせないのも特徴だ。

例えば、一般作のアクションゲームの平均プレイ時間は、普通にプレイしてエンディングを迎えるまでで10時間程度が普通だ。しかし、エロゲーで10時間だったら「とても短いゲーム」として低価格ゲーム帯の作品になってしまう。
だいたい、大作と呼ばれるノベルゲーでボイススキップなしの場合、すべてクリアするまでに20〜40時間掛かるのはざらである。



■ゲーマー視点から見た場合のエロゲー
エロゲーをまったくプレイしないゲーマーが、プレイしない理由を述べる場合、「ゲーム性が低い」というのが頻出される回答だ。

この点に関してはほぼ事実と言って差し支えない。
遠慮ない表現を使うなら「エロゲーじゃなかったら売れていないゲーム」も確かに存在するし、作り手、売り手の側もそれをある程度は理解している。

ただそれをして、「ゲームとして詰まらない」かと言えば、そうでもない。
アクションゲームにパズルゲームにないエクスペリエンスがあるように、ストラテジーFPSとは違った楽しさがあるように、エロゲーには他のゲームにないおもしろみがある。

しかし、エロゲーは、発売本数の多いゲーム(ひと月平均十数本)であるため、玉石混淆で、参入障害の高いコンソールゲームと比べて地雷率は高い。
この為、初心者が何気なくエロゲーに手を出すと、それは地雷であることが少なくない。
そして、未知の荒野に踏み出した一歩目が地雷だったとき、その旅人はもう二度と旅路にはつかなくなってしまう。

次回は、このあたりに着目して、宝島を見つける為の指針について、解説していきたい。