エロゲーの話(その2) 今日からできるエロゲー選び

エロゲーは定価1万円とか、気が遠くなりそうな値段をつけてくるジャンルであるにも関わらず、地雷率が極めて高い。

もっとも地雷にもいろいろある。
「ゲームとして完成していないレベル」と「期待を下回っただけ」のものでは天地の開きがあろう。
しかし、1万円(実質7千円)を払ってる身にしてみたら、どっちも片足吹き飛ぶ程の地雷には変わりない。

今回の「エロゲーの話(その2)」では、「エロゲーの選び方」について、入門者が達人に至るまでのコツを伝授していこうと思う。



■なぜエロゲーの地雷率は高いのか?
エロゲーは「絵」「ボイス」「シナリオ」の3要素で構成された凄まじくプリミティブなゲームだ。
そしてエロゲーとして成功を収めるには、これらの3要素にバランスよく、ある程度高い水準を要求される。

絵、すなわちグラフィックは公式サイトをはじめ、露出の多い要素なので、あまり誤魔化せない。
すなわち、エロマンガの表紙と中身の関係みたいな不幸は少ない。

ボイスも声優は公開されているのが普通だし、公式サイトで「キャラクター」のタブを押せば3〜5パターンくらいのサンプルボイスが聴けたりもする。
すなわち、ここでも極端なごまかしは発生しない。

つまり問題はシナリオにある。
単純に言って「話がつまらない」と地雷パターンに陥る。
ただエロゲーのストーリーは、題材そのものの優劣としては、そこまで極端な差はない。どれも妄想癖をこじらせたようなものばかりだからだ。
だから、ここでいう「話がつまらない」とは、実のところ「文体があわない」という意味になる。

(ゲームの)シナリオというのは、まずストーリーがある所から、それを切ったり貼ったり、演出したりしてうまく組み立てるものだ。
だからそれには、それ相応の技術を要する。
にもかかわらず、その専門的な技術を持っているべきライターの数と、発売されるエロゲーの数がミスマッチだから、「技術が十分でないライターでもシナリオを書いてしまう(プロとしてやれてしまう)」という状況が発生する。

これが地雷と呼ばれるエロゲー発生のメカニズムである。
まとめると「文章表現が下手なゲームを手に取ってしまうと楽しめない」となる。

※言い換えれば、絵が多少好みと違っても、筆致さえ問題なければ楽しめる場合が多い。エロゲーで絵買いはダメってのはおかしな話だが、実際そうなのだから仕方ない。



■入門編:評価の定まった人気作を選ぶ
確かな文章力を持ったエロゲーを選ぶには、どうしたらいいか。
これは普通の小説やラノベに例えて考えれば分かりやすい。

有名な作家や、読んでおもしろかった作家の作品を買えばいいわけだ。

しかしエロゲーの入門者は、エロゲー経験が少ないので、
「誰が有名なのか」とか「どれがおもしろいのか」なんて知識は持ち合わせていない。
だったら発想を少しずらして考えてみよう。

単純に、
売れてるゲームを買えばいい
という話である。

ゲームのおもしろさと売れ行きというのは、関係ありそうで、実はあまりない。
しかし、広告がうまく、多くの人に買わせるだけの力を持ったソフトというのは、それだけでも「ちゃんとしている」。
そして、ちゃんとしているソフトが極端なハズレであるケースは少ない。

気骨のある人は「人と同じ物なんてやだ」とか言いそうだが、「入門者」はそれらしく、とりあえず有名作に手を伸ばすべきなのだ。

・有名作の調べ方
とは言え、エロゲーの売り上げなんて分からん。
ちゃんとした統計が採られているのかも不明だ。

しかし安心無用。我らには「エロゲー批評空間」がある。

http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/toukei_hatubaibi.php

このサイトは、ユーザーが自分の尺度でエロゲーに点数を付けられるレビューサイトだ。
様々な趣向を持ったユーザーが、まったく独自の基準で点数を付けるので、発売直後の点数はまったくあてにならないが、そのレビューの数は信頼できる。

例えば「データが100件以上の2010年に発売されたゲーム」で絞り込むと、こうなる↓。
http://erogamescape.dyndns.org/~ap2/ero/toukei_kaiseki/toukei.php?data_suu=100&year=2010&heikinten=0&kihon_mode=hatubaibi

データ数が100を超えていて、点数の中央値が75以上のゲームは、「世間的にはアタリだと受け容れられた」と考えて差し支えない。
入門作には、それらの「評価の定まったタイトル」を選ぶのがいい。

ちなみに、エロゲー界は技術的進歩が凄まじくゆっくりしているので、2007年のゲームも2011年のゲームも目立った違いはない。数年前のゲームでも安心して、現代水準で楽しめる。



■中級編:遊びたい傾向のゲームを選ぶ
何本か評価の定まった有名作をプレイすると、エロゲーの仕組みがだんだん分かってくる。
どのブランドがどんな雰囲気のゲームを作ってくるのか、どの声優はどんな演技をするのかなどだ。

また、自分自身のエロゲー趣向も見えてくるはずだ。
例えば私は、ありとあらゆる変態系もガッツリOKなのだが、ロリキャラだけはきもくてダメである。
こういった、趣向が掴めれば、「次はこんな感じのを狙ってみるか」と照準を定めやすくなる。

中級者の自覚が生まれたら、有名作の中から、遊びたいゲームの傾向を意識してゲームを選ぶようにしてみるといいだろう。



■上級編:期待の新作にも挑戦しちゃう
評価の定まったタイトルをプレイするだけで満足できなくなったら、諸君も上級者の仲間入りだ。
それまでに培った、経験を活かして、新作にも手を出す時が来たと言うことだ。

エロゲー業界は信じられない程律儀に、発売前の体験版を出す業界だ。
その月に発売されるタイトルから、めぼしいものをピックアップし、それらの体験版をプレイしてみよう。

体験版は、ゲームそのもののおもしろさを体験すると言うよりは、文体のミスマッチや、筆力の程度を見極めるのに効果的だ。
ある程度の本数を経験していれば、数十分程度の体験版から、製品版の完成度を類推することができるようにもなる。
この様な「ハズレを避ける」という観点では、単なる先行PR版でしかない洋ゲーの体験版よりも、存在感はずっと大きい。

ちなみに、都会在住でないなら、エロゲーの購入には通販を使うことになる。
ショップによって初回特典が違ったり、そもそも、それに伴って値段が違ったりもするので、自分にあったものを選ぶといい。DMM通販が予約の場合、かなり安い場合がある。



■達人編:地雷原を裸足で走る
迂闊にもいくつか地雷を踏むとだんだん慣れてくる。
そしたら既に達人の域は見えている。

低価格帯ゲームや同人ゲーム、新興メーカーの(気合いの空回りした)1本目など、エロゲーには一般作にないカオス感が充ち満ちている。
これらのゲームには、「そんなのアリなのか」と思えるような、特殊な趣向にフォーカスしたようなタイトルすらある。

達人に理屈は必要ない。
己の感性と閃きの赴くままに、
「3本のうち1本アタリならいっかな!」と、心を武装して、地雷原に跳びだそう!



■まとめに代えて 〜入門向けオススメゲーム〜
ゲームは理屈で楽しむものなので、いきなりオススメタイトルを掲げて「これやっとけ!」なんてのは味気なくて出来ない。ちゃんと理由があることを理解せずに、答えに飛びつく人間は進歩できない。
とは言え、私も子供の頃の算数ドリルは、末尾の答えを参考にしつつ、適当にわざと間違えてリアリティを出していた口なので、オススメ作も最後に挙げておく。
(「アレがねえだろ!」って思った人は、是非、自分のサイトで紹介して欲しい)

Fate/stay night」は今となっては若干古いゲームで、「ボイスなし」というシンプルな作りながら、一時代を築いた力のあるゲームだ。(前日単を扱うアニメもまさに今やってるし)
ラノベにエロ要素を取り入れました」というノベルゲーなので、読みやすくもある。
このゲームの川澄綾子PS2版非エロゲー)はガチ。





つよきす」は、魅力的なキャラと、冴え渡るコメディーの才が光るアドベンチャーゲーム
読みやすく、愉快に笑え、最後に少しいい話になるというバランス感覚の優れたタイトルだと言える。
エロゲー入門者に「これがエロゲーだ」と勧めるのに申し分ないゲームでもある。
このゲームの青山ゆかりはガチ。





BALDR SKY(バルドスカイ」は、ロボットコンボアクションゲームの要素を盛り込んだSFアドベンチャーゲームとして非常によくできたゲームである。
Dive1とDive2の二分割された売られ方なので分かりづらいが、「とりあえず、Dive1を遊んでみて、気に入ったらDive2にも手を出す」といい。ヒロインが違うだけだが、(当然)逆順でプレイするよりも無理がない。
このゲームの井村屋ほのかはガチ。


マヴラブ オルタネイティブ」は、平行世界SFものに、ミリタリーテイストを加えたノベルゲームだ。
絵柄は癖があり、パッと見の印象はあまりよくないだろうが、ゲームの内容は「ガチに素晴らしい」ので是非プレイして欲しい。
間違えて「マヴラブ」を買うと、スカされるので注意。
このゲームのCVはみんな力が入ってる。

素晴らしき日々」は、ヴィトゲンシュタインに代表される哲学的思想をエロゲーに取り入れたインテリ系エロゲーだ。
理解に苦しむような電波なノリに押されるが、それを押し返して読み切ると、実によい読了感を得られる。
小難しい感じの文学小説が好きなら、特にオススメできる。
このゲームのかわしまりのはガチ。


他にもあるが、入門向けとしてはこのあたりだろう。
それぞれ通販などで買えるが、ダウンロード販売はないのでやや入手しづらい。
新品がプレミア価格になっている場合は、中古で十分だと思う。
(ロットアップさせて放置しているメーカーが悪い)